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錆落とし
磨き上げによって大体のキズを落とすことができたので、次の工程に進みます。ヤスリでもある程度の錆を落とすことができますが、取り切れていない錆を落とすためにトイレ用洗剤を使い、化学反応を起こして落としたいと思います。この作業は大変重要で、仕上げのガンブルー処理をする際に、錆が残っているとムラができたりするので、しっかりと錆を落とします。
今回利用したのは、ダ○ソーで購入したトイレ用洗剤『ナイス』。有名なモノだと『サンポール』がありますが、基本的に同じ成分(塩酸9.5%)が入っているので、どちらでも大丈夫です。塩酸が10%を超えるモノは劇薬扱いとなるので、薬局などでしか手に入りません。鉄と塩酸の化学反応で錆を落とすには、9.5%くらいの希塩酸で問題ないです。
洗剤をたっぷり入れた容器にバターヘッドを浸け置きします。入れた時から、小さな泡がポツポツ湧いてくるので、お風呂場などで換気をしながら、大体、1時間程度浸け置きしておきます。浸け置き中に、歯ブラシなどを使って表面を磨くと付着していた黒っぽい錆などが剥がれ落ちてきます。容器から取り出すと、パター表面は酸性状態なので、ジワジワと錆が発生してきます。ここからは素早く作業を行います。
同じく、ダ○ソーで購入した、レンジ用の洗剤。アルカリ性の洗剤であれば何でも大丈夫です。酸性になったパターを中性に近づけるために、アルカリ性の洗剤に浸します。だいたい30分程度浸し、水でキレイに洗い流します。
水気を切ってからの状態です。浸け置きする前に比べて全体的に白っぽくなっており、ところどころ、まだ黒っぽい錆が付着していますが、全体的に#1500くらいのヤスリで軽く磨いてやると簡単に錆が落ちてキレイに仕上がります。
磨き上げた後は、脱脂をします。イソプロピルアルコールまたは、アセトンなどを使用して全体的に油が付着しないように脱脂をします。この際、皮脂が付かないようにゴム手袋をしながらするのがオススメです。脱脂が完了したら、いよいよガンブルー処理に移ります。
ガンブルー
ガンブルーとは黒錆を利用した表面処理です。黒錆(Fe3O4)は赤錆(Fe3O3)と違い、金属表面に膜を形成し、金属を腐食させる赤錆を防ぐ効果がある良い錆です。今回使用したのは、『バーチウッド スーパーブルー・リキッドガンブルー』。楽天などで2000円前後で購入できます。もし購入される場合は、バーチウッドの似たような商品にアルミ用ガンブルーなどがあるので、間違わないようにしてください。
このガンブルー溶液は劇薬に近い成分が入っているので、取り扱いには気をつけて行います。できればゴーグルやゴム手袋をしながら作業をするのが良いかと思います。また、鉄と反応すると非常に臭うので、換気できる場所か屋外で作業するのをオススメします。
塗った瞬間から青黒く染まっていきます。今回、筆を使用して塗ったのですが、実は1度失敗しています。失敗した場合は、再度、黒錆をヤスリで落とし、塩酸に浸け置き作業を繰り返すという途方な作業をやり直しました。
筆でガンブルー液を塗る場合、塗りすぎてしまうためムラが発生したり、キレイに黒錆が定着しない問題が発生しました。筆を使うのではなく、ティッシュ(キムワイプがオススメ)にガンブルー液を少量湿らせ、非常に薄く伸ばすように塗ると、キレイに仕上がりました。5回ほど同じ作業を繰り返して錆膜を厚くし、中性洗剤で洗い流します。
洗った直後は、ムラができているので、錆膜を均等にするためにスチールウールタワシを使って、優しく表面を撫でるように黒錆膜を整えていきます。ゴシゴシ力を入れて磨くと、せっかく定着した黒錆が剥がれてしまうので、優しく表面をこする程度で大丈夫です。
黒錆膜がキレイに整えられると、黒の中に少し青みがかった味わい深い色合いになります。最後に、パター刻印部分にマニキュアで色入れをし、工業用オイル(KURE 5-56等)で表面をコーティングしてやると、ツヤが出て非常にキレイに仕上がります。
完成後、パターヘッドをシャフトに装着します。今回はメタルロック(Y611黒S)を使用して装着しましたが、普通の金属用接着剤でも問題ないと思います。
Before After
まとめ
3回に分けて、スコッティ・キャメロンのガンブルーレストアを紹介しました。昔のスコッティ・キャメロンはフリマアプリにおいて安値で取引されているので、状態の良い個体を選び、レストアすると非常にキレイなパターに蘇ります。磨き上げから約8時間くらい掛かったと思いますが、手を込めてレストアするのも非常に楽しかったです。今後も、クラフトネタをちょくちょく公開して行ければと思います。